元引越し業者が教える、引越費用の交渉を左右する3つのポイント
引越しは、料金が決まっているようで決まっていないような、今時珍しい「言い値」の商売です。
そのため、金額交渉もそれほど難しくなく「条件を満たせば」値引きをしてもらい引越し費用を減らすことも十分に期待できます。
なぜ、そう言えるか。
理由は私が「引越し業者で、実際に金額交渉を受けていたから」です。
引越し業者から見ると「値下げをしやすい客」と「値下げをしにくい客」が存在します。
今日は引越し業者側から見て「どういった条件であれば値下げがしやすいのか」、つまり、「どういった条件で臨めば、上手く金額交渉を行って引越し費用を抑えることが出来るのか」をお伝えします。
引越し業者は「あなたの人柄」を見ています
電話でも、直接訪問でも、引越し業者はあなたの人柄に注目します。
理由は「人格的に問題のある人は、後から難癖をつけて来る可能性が高いから」です。
私は引越し業者で電話を主に担当する内勤業務を行っていた経験がありますが、上司から「面倒な人には高い金額を出して、受注しないよう誘導して欲しい」と言われていました。
私が経験した「困った客」を紹介します。
・料金を踏み倒す。(ドライバーに直接料金を支払う場合、引越し後の支払いとなるため、踏み倒そうとする人がたまにいる)
・荷物が申告時の数倍に膨れ上がっている。(電話見積もり時に嘘をついている、訪問時に隠している、など)
・訪問時に全く荷造りがされていない。(梱包サービスを申し込んでいないのに、梱包を要求する)
・引越し作業に問題があったと言い張り、後日金銭を要求してくる。
・従業員の態度が悪かったので、家に謝りに来させろと毎日電話をかけて来る。
全て引越し業者からすると割に合わない仕事になります。
割に合わないどころかほとんど赤字です。
こういった困った客を避けるため、皆さんが思っている以上に引越し業者は依頼者の「人柄」に注目します。
逆に言えば「このお客さんは問題起こさなそうだな」と思われれば、値引きなどのサービス追加の選択肢が生まれるということです。
単純なようでいて、実はとても効果的な方法です。
また、当然ですが引越し屋も人間です。態度の悪い客に対して過度なサービスを行うことはありませんし、接客していて気持ちの良い客であれば手心を加えたくなることも多々あります。
料金交渉の一つ目のポイントは「引越し業者からの印象を良くする」ことです。
引越し業者は「空き時間」を有効利用します
引越し業者にはたくさんのトラックがあります。
それを運転するためのドライバーも沢山います。
そのため、引越し業者では仕事が無くても、日々トラックの維持費や人件費が積みあがっていきます。(トラック購入時の金額も当然乗ります)
仕事の有る無しに関わらず支出が発生する以上、抱えている人材やトラックを、どれだけ効率良く使うかが引越し業者にとっては重要になります。
多くの引越し業者は「フリータイムプラン」と言うものを採用しています。
フリータイムプランとは、引越し当日の時刻指定が出来ない代わりに、料金を安くするというプランです。
フリータイムプランでは、段ボールを5個や10個減らしたくらいでは到底追いつかないくらい、大きな値引きが行われます。
なぜ、そこまで時間を一任して欲しいのか。
理由は、前述した「抱えている人材やトラックを、どれだけ効率良く使うか」に大きく影響するからです。
例えば、朝8時からの引越しと夕方16時からの引越しが同地区で入っていたとします。
朝8時からの引越しは、11時完了予定。
引越し業者としては空いている12時~15時に同地区での引越しをもう1件入れたいと考えます。
こういった状況の時、フリータイムプランの引越しがあれば、この空きに入れることで1日で3件の引越しをこなすことが出来ます。
しかし、そうでなければこのチームの引越しは2件に留まり、場合によっては人件費だけがかかる待機状態になってしまいます。
こういった都合から、引越し業者は時間の自由度を重視します。
料金交渉の二つ目のポイントは「引越し業者に時間を合わせる」ことです。
必ずしもフリータイムプランを選ばなければならないわけではなく、「引越し業者の都合を聞いて時間を調整する」ことで交渉出来るケースもあります。
引越し料金にはその金額になった「理由」があります
なぜ引越し業者は当たり前のように値引きをするのか。それは、元々提示している金額が「値引きを想定した額」だからです。
Webサービスの一括見積であっても、直接訪問の見積であっても、電話で荷物を伝えての見積であっても、基本的には一緒です。
会社毎にポリシーの違いはありますが、多くは「少し高めに出して値引きする」というやり方を取っています。(一括見積では安く出して、電話すると値段が跳ね上がるという悪質な手法を使う会社もありますが…)
そのため、交渉して「1円も下がらない」場合は、確実に何らかの理由があります。
例えば
・希望している日時が、既に依頼でいっぱいで無理して受注する必要が無い。
・見積もりを安めに出して、後から色々理由を付けて高くするタイプの引越し会社だった。
・やり取りの際、面倒な客として認識された。
・途中で価格を上げざるを得ない追加条件が発覚した(初回提示額でも実は安い)
まだまだ色々ありますが、一度「こう言う理由で値下げ出来ない」と判断されてしまった場合、それ以上の価格交渉は難しいです。
ただし、こういったケースでも確実にできる事が一つあります。
それは別の引越し会社に問い合わせをすることです。
A社にとってあなたの希望する引越日は依頼がいっぱいの日かもしれませんが、B社にとってはガラガラでどうしても受注したい日かもしれません。
A社に嫌われたとしても、B社から見たら良い客かもしれません。
一社一社状況も考え方も違うため、一社にこだわり無駄な交渉をするよりも早い段階で複数社に相談した方が確実です。
つまり、料金交渉の三つ目のポイントは「一社にこだわらない」ことです。
補足
引越しの際には、引越し一括見積もりサイトなどで、何社かの見積もり(相見積もり)を取ることをオススメします。
個人的に、操作感が一番良いと感じたのは日本最大級の不動産情報サイト「HOME’S」が運営する引越し一括見積もりサイトです。
一括見積もりサイトは家財を細かく入力するタイプのサイトが多いですが、多くの引越し業者は入力内容が本当に正しいのか確認を取ります。つまり、一括見積もりサイトで頑張って細かく家財の情報を入力しても、結局電話確認や訪問しての確認が入るため、手間の割にあまり意味がないということです。(一括見積もり問い合わせ時点で料金を提示されることもありますが、これも確認時に変動するのであまり参考になりません)
HOME’S引越し見積もりでは最低限の情報だけで一括見積依頼が出来るため、引越し前の一手間を減らして気軽に相見積を行うことが出来ます。
また、引越し前、引越し後の住所、間取りなどを利用した最低限の絞り込み機能がついているため、無駄な問い合わせを避けることが出来ます。(対象地域に営業所が無いから無理、なんて無駄な連絡を受ける必要もありません)
(引越し先や荷物の量を入力すると、100社以上の中から13社に絞ってくれました)
その中から、さらに自分で選択した引っ越し業者のみを選んで見積もり依頼を出せるため、大量の引越し業者からの営業に悩まされる必要はありません。
また、個人的なアドバイスですが、備考のところに「メールでの連絡をお願いします」と書いておくことをお勧めします。
おまけ:混雑時期の料金は通常時の数倍になります
誰もが知っていることなのでおまけ程度に。
引越しは時期によって料金が大きく変化します。特に高いのは1月中旬~3月下旬まで。
この期間は、会社にもよりますが最低価格時と比較して3~5倍程度の料金を要求してくる場合があります。
「高すぎる!」と言っても無駄です。
トラックも人員もギリギリまで出払っている状態なので、強気の姿勢を崩すことはまずありません。
交渉の余地はないので、混雑時期は何としても避けた方が無難です。
おまけ2:業者にはそれぞれの特性があります
引越し屋と言っても「元がリサイクル業」「元が運送業」など、それぞれの業者は別の特性を持っています。
こちらの記事で紹介しているトレファク引越しのように、「特性を利用してお得な料金体系を実現している」ような業者もあります。
「いくら安く出来るか」だけを考えるよりも、「自分の要望と業者の特性がどれだけマッチしているか」を考えた方が、金額的にも、サービス的にも満足度が高くなる場合が多いです。
最後に
引越し業者では料金を決定する際に様々な条件を見ています。
誰でも想像がつく「荷物の量」「移動距離」以外にも、実は「引越し業者の都合」によって見積もり金額が増減しています。
「引越しの際は、引越し屋の都合に従いましょう!」という話ではありません。しかし、料金交渉をしたいのであれば「妥協して都合に合わせてあげた方が交渉はしやすい」のは間違いありません。
引越しの際、引越し先や荷物の量、日程などある程度の条件は動かしようがないと思います。
しかし、相手に対する態度や、妥協する姿勢に関しては、意識次第でいかようにも出来ます。
サービスを提供する相手も人間。それを意識するだけで、あなたにもプラスになる可能性が高いというのが、実際に引越し屋で働いていた私の経験則です。