引越しで積み切りプランを絶対に頼んではいけない理由
運送屋系の引越しサービスでよくある「積み切りプラン」。
2トンロング車1台積み切り~などのプランで、細かく積み荷を指定せずとも「詰めるだけ積む」ということで一見お得そうに見えるプランなのですが、これは絶対に利用してはいけません。
私が昔働いていた引越し屋でも積み切りプランは存在していましたが、当時のセンター長から「極力取るな」と言われていた問題の多いプランでした。
今日は、一見お得そうな積み切りプランが、いかに危険で問題のあるプランなのか、お伝えしたいと思います。
積み切りプランは凄く揉めることが多い
積み切りプランは一言で言うと「揉める確率が高いプラン」です。
理由は単純で、「引越しを請け負う側の責任が一切無いから」です。
通常、引越しというのは荷物を確認した上で、その積み荷に合わせたトラックを用意し、そこに荷積みをするという順番になります。あくまでも主体は荷物で、トラックはあとから決まるということです。そして、そのトラックの選択は依頼を受けた側、引越し業者側が行います。
つまり「荷物を積み切るのは引越し業者側の責任」になります。
「この物量なら2トンで行きましょう」と言われて、いざ引越しを開始したら「すみません、乗り切らないです」となったとしても、それは引越し業者側の責任です。見積書に書かれた荷物は必ずその金額で運ぶ義務が発生します(荷物の追加があった場合は別)。
しかし、積み切りプランは先にトラックを決めてしまいます。「これに積めるだけ積むよ」という契約なので、積めなかったら積まないということです。
仮に積み切れなくても依頼者に責任があるというプランなので、引越し業者側は一切の責任を負いません。ポイントはここなのですが、仮に引越し業者側が「これなら2トンで行けますね」と言ったとしても、積み切りプランの場合、積めなくても引越し業者側は一切の責任を負いません。見積書に書かれた荷物の一覧すら関係ありません。
ということで、結構な確率で揉めます。
作業員の一存で積める量が変わる
「積み切りプランは依頼者が責任を負う」というのは一見当たり前のように見えますが、それだけならそこまで問題は起こりません。
一番の問題は、「積み切りプランで積める量を決めるのは作業員」という点です。
トラックに荷物を積むのは作業員です。当然積み方も作業員が決めます。では、作業員がトラックをスカスカにして、出来るだけ積める量を少なくしようとしたらどうなるでしょうか?
答えは「その分荷物が積めるスペースが減る」です。
これは残念ながら実際に行われていることで、スカスカにはしないものの「家具を分解したら積めるけど面倒だからやらないで置いていく」とか「重ねられないと言い張って積む量を減らす」といったことはごく当たり前のように行われています。
当然揉めるわけですが、「安全上難しい」とか「これはプロの目から見たら積める量ではない」とか適当なことを言って作業をしない人は普通にいます。
引越しは大抵前料金制で、当日作業員が到着した瞬間にお金を渡します。お金さえ受け取ってしまえば、あとは「作業量を減らして時間を短縮してしまおう」と短絡的に考える人もいるため、実際にそういったことが起こってしまうわけです。
トラックを借り切って積み切れるわけではない
これもほとんどの人が知らないことですが、積み切りプランは、トラックを丸々借り切って積み切るプランではありません。
積み切りプランとは「既に資材や工具などが占有しているスペースを除いたスペースを借り切るプラン」になります。ということで、作業員が持ってきた資材の量が多かったり、複数件引越しで前の引越しの荷物や資材があった場合、その分自分の荷物が積めるスペースは狭くなります。
「そんな馬鹿なことがあるか」と思う人も多いかと思いますが、これが現実です。最悪のケースでは「前の引越しが新築で養生資材を大量に持ってきたので積み荷スペースが圧迫されている」みたいなこともあります。場合によっては、前の引越しで廃棄依頼を受けた家具が乗った状態からスタートなんてことも…。
もちろん、これは引越し業者のモラルによります。とんでもない業者もあれば、「大量の資材などが発生した場合は、別のトラックが寄って持っていく」といった対応をキッチリ行っているケースもあるでしょう。
ただし、前述したように「積み切りプランで積む量を決めるのは作業者」です。仮にあなたの引越しには関係ない荷物や資材のせいで積み切れなかったとしても、それをあなたが把握するのは難しく、また積み切れなかった際は、そのプランを契約したあなたの責任として処理されます。
作業員の裁量を拡大することの危険性
積み切りプランの根本的な問題は、作業員に過度な裁量が与えられてしまうという点にあります。
通常のプランであれば、引越し業者側は「記載された荷物を既定の料金で運ぶ」という契約をクライアントと結ぶことになります。これはクライアントと会社との契約であって、作業員はあくまでもその契約内容に沿った仕事を行うのみとなります。
しかし、積み切りプランは違います。積み切りプランでは「何をどう載せるかは作業員の裁量次第」となってしまうため、悪意を持った作業員が紛れ込んだ時に、それを止める手段がありません。
そんな悪意を持った人はいないと思うかもしれませんが、引越し業界はパワハラで何かと話題の尽きない業界です。日常的なパワハラ環境で、自分が強い立場に立った時、それが客だけには絶対に向かわないと考えるのは無理があるでしょう。
積み切りプランの問題は、個人の問題ではなく仕組みの問題です。契約上、どうしても作業員の裁量権が大きくなってしまい、また責任を顧客に押し付けやすくなってしまうため、起こるべくして起こっている問題です。
悪意を持たず、顧客サービス第一で頑張っている人も居ると思いますが、そうではない人がどうしても発生してしまう仕組みがそこにあります。
積み切りプラン自体はそれ程必須と言えるようなサービスではないので、私の元職場のセンター長の意見同様、利用者側も「極力利用しない」ことで身を守ることをお勧めします。
ちなみに、積み切りプランは運送会社の引越しサービスで推されていることが多いプランですが、運送会社には別の問題も潜んでいます。
引越し侍には備考欄があるので「電話連絡お断り、メールで連絡をお願いします」と書いておくと穏やかな気持ちで比較出来てオススメ。