運送会社の運営する引越しサービスを選んではいけない理由
私は以前引越し屋で働いていたことがありますが、その際に上司から何度も言われたのが「私たちは引越し屋であって運送屋ではない」という話でした。
世の中には、「〇〇引越しセンター」という名前の付いた一見引越し屋風の引越しサービスを行う業者が乱立していますが、その中には「運送がメインの会社が行う引越しサービス」も紛れています。
そして、これが大問題。全部が全部ではありませんが、引越し屋ならありえないような質の低いサービスが存在する要因になっています。
一般の人には中々見わけが付きにくい部分ですが、運送と引越しは全然別物です。
実際に地雷を引いてみるとわかるのですが…今日はそんな、引越しの際は「運送屋を選んではいけない」理由をお伝えしたいと思います。
引越しは人生の一大イベント
引越しというのは、人生の中でかなり大きなイベントです。
引越し専門の業者はそれを理解しているため、入社したらまず最初に「引越しというのは、引越しする人にとっては大切な一大イベントなんだから、物を運ぶという考えでは駄目だ」ということを教わります。生活が一変するという意味で、結婚式や葬式のような「式」と思って望めと私は教わりました。
言われてみれば当たり前のことなのですが、これは言われるまで中々気づきません。「引越しなんてもの運ぶだけでしょ?」と考えている人は少なくありません。多くの人は、言われてみて初めて「そうか、その人にとっては生活環境が激変する大事な日なんだ」と理解するものです。
しかし、運送屋の仕事はあくまでも「運送」。物を運ぶことです。物を運ぶプロとして引越しの現場に来ているので、クライアントの大切な日…なんてことは考慮しません。物を運んで、置くことだけを仕事と捉えています。
運送屋の考え方と真逆の対応を行うことで有名なのがアート引越センターです。アート引越センターは、新居に前の家のほこりを持ち込まないよう、家具を綺麗にしたり、新居に入る前に靴下を履き替えたりするサービスを提供しています。
これは単純に清潔感があるというだけの話では無く、新たな旅立ちを祝う門出の日に、新居に前の家からのけがれを持ち込まないという姿勢でもあります。
引越し屋のトラックは引越しにしか使われていない
引越し屋も運送屋も共通するのが、利益を出すためには出来るだけトラックを余らせないというところです。トラックが余って車庫に眠っているような状態だと、整備費だけがかかる状態となってしまうため、出来るだけ多くのトラックが常に走っている状態にしようとします。
すると、運送屋の場合は「運送で使っているトラックを引越しでも使う」という事態が発生します。
一般的に引越しの荷物というのは家の中で使うものになります。自転車など一部外に置いておくものを運ぶケースもありますが、「人が使うもの」を運ぶのが引越しです。
しかし、運送の場合はそうではありません。工場で使うことを前提としたものを運ぶこともあれば、動植物を運ぶことだってあります。ある程度トラックを分けて運用するのが一般的だったとしても、「私の荷物と一緒には運んでほしくないもの」を積んでいた可能性もゼロではありません。
また、引越しでも良くやりますが、スペースが空いていたら他の荷物と「合積み」することがあります。
引越し屋の場合は合積みしても引越しの荷物と確定していますが、運送屋の場合はそうとは限らないでしょう。何が合積みされているかわからないというのは、あまり気持ちの良いものではありません。
運送屋は洗濯機の設置など引越しの付帯作業が下手
これは私が実際に経験したことです。数年前、私がまだ貧しかった頃、金額が安いからという理由で、運送会社の引越しサービスを利用したことがあります。
確かに金額は安く、私が働いていたところに元従業員価格で見積もりをしてもらった金額よりも安い金額で引越しを行ってくれるということでした。
しかし…引越し作業が始まって、私は後悔することになります。
大きなものは出しておいて良いとのことだったので、PC類を出しておいたのですが、緩衝材で包むことなく持ってきた段ボールにドン。「そのままじゃ振動で不味いだろ…」と思ってたところ、ティッシュの箱とキッチンペーパー(私の)を勝手にギュウギュウ押し込み、そのまま雑にドカドカと運び出し。
全体的に雑な作業にハラハラしていたところ、今度は引越し後に「この洗濯機俺が付けるんですか?」と謎の質問。いや、申し込んだときにやるって言ってたでしょ、と伝えると「それ営業でしょ、俺は知らねえよ」とのこと。結局ブツブツと「ホントはこんなことやらねえんだよ」「運ぶだけで終わりなんだよ」と私に文句を言い続けながら設置をして帰っていきました。それこそ営業に言え。
しかし…ここで悪夢は終わりません。引越し後にほこりだらけになった服を選択しようと洗濯機を起動すると、エラーが発生。「あれ?元栓空いてなくない?」と元栓を空けた瞬間、ホースの付け口から水があふれて大惨事に…。
文句を言いながらも一応ちゃんと取り付けたのかと思っていましたが、ちゃんと出来ていなかったようで(ネジで4方向から調節して取り付けるタイプは多少コツがいる)、結局自分で付けることになりました。そして、ホースもぐちゃぐちゃでエラー連発だったので、結局洗濯機自体を再設置…。
全ての従業員がそうだというわけではありませんが「運ぶだけで終わりなんだよ」のコメントからもわかる通り、「運送屋は荷物を運ぶのが仕事(だから他のことは料金外の仕事)」と思ってる従業員が実際にいるという話です。
積むのも下手
これも私が引越し屋時代に上司から言われたことですが、運送屋には「引越しの荷物を綺麗に積むノウハウが少ない」ケースがあります。
引越しの荷物というのは家庭によって差が大きく、また大きさも重さも強度もバラバラのものを同時に運ばなければならないという制約があり、単に均一な大きさのものをまとめて運ぶのとは異なる技術が必要になります。
これを、熟練の引越し屋はテトリスのように組み合わせながら綺麗に、且つ傷つけずに積むことが出来るのですが、通常の運送ではこういった技術は必要とされないため、こういった技術を持った作業員がいないケースがあります。
下手な積み方をするということは、「積める量が減る」「傷みやすくなる」ということなので、引越しの質そのものに直結します。下手な積み方しか出来ない場合「積み切れないので残す」「往復で追加料金」「家具が傷む」といった事態に陥る可能性も高まるため、仮に安い料金で依頼できたとしても、それ以上のものを失ってしまうなんてことも。
運送屋を使うメリットは料金のみ
運送屋が行っている引越しサービスは多くありますが、大抵どの会社も「運送会社のサービスだから安い」といったことをうたっています。
法律上、引越し屋は運送業を営んでいる必要があるため、法律上の定義は全く一緒なのですが、なぜ運送屋は安く出来るのでしょうか。
それは、ここまでに書いてきたように「運送屋の引越しは相対的に質が低いから」に他なりません。
引越し屋のやっている
・引越しを気配りの必要な大事なイベントと理解させるための教育
・洗濯機設置や配線取り付けなどの付帯作業の訓練
・引越し特有の複雑な荷積みの訓練
・引越しのためだけにトラックを確保
これらの取り組みは、全て「お金がかかる」ことです。こういったことを行わなければ料金が安くできるのも当たり前ですが、逆に言えば「安いということはこういった取り組みを行っていない」ということです。
安かろう、悪かろうを全て否定するわけではありません。とにかくお金さえ浮けば何でも良いという人も居ると思います。
しかし、私も実際に経験がありますが、人生の大事なイベントである引越しで不快な思いをした記憶というのは、悪い記憶として長年残り続けます。
私は数年前に行った引越しでの洗濯機取り付けのやり取りを、いまだにハッキリと覚えています。私は引越し屋で働いた経験もあり、機械にも詳しいので自分で直せましたが、それでも当時の作業員の態度を思い出しては嫌な気分になることがあります。
お金は確かに大事ですが、嫌な記憶というのは長年残り続けます。
私の引越しの経験上、引越し屋で働いていた際に色々と受けた教育の経験上、余程のことが無い限りは、運送屋以外を選択した方が無難だとお伝えしておきます。
また、アートは高過ぎるから無理という方は、一括サイトで運送屋以外の引越し屋にまとめて見積もり依頼を投げて比較することをお勧めします。
(運送屋か引越し専業かは、業者名で検索して公式サイトを確認すれば簡単にわかります)
引越し侍には備考欄があるので「電話連絡お断り、メールで連絡をお願いします」と書いておくと穏やかな気持ちで比較出来てオススメです。