投資で老後2,000万円は理屈では可能だが現実は運次第

「老後に自力で2,000万円を作る自助が必要」というセンセーショナルな情報が金融庁から発せられました。

これを機に投資機運が盛り上がっているようで、証券会社には新規の口座開設依頼が殺到しています。

私もFXからスタートし、日本株、外国株、投資信託など様々なな金融商品で資産運用を行っていますが、やはり急な盛り上がりで見かける言葉というのは過度に強い言葉が使われているものが多く、投資について一定の知識がある私から見ても「これはどうなの?」と首を傾げるような情報が多くなってきているように感じます。

こういった情報の多くは、リスクをかなり低く見積もっていたり、または無いものとして見ていたり、メリットを過剰に押し出していたりするものが多く、実際に投資を続けている立場から見ると危険な情報が急激に拡大しているように見えます。

今回は、そんな危険な情報に惑わされず、自分は投資をやるべきなのかどうか判断出来るように、初心者にもわかりやすく投資の仕組みを伝えていきたいと思います。

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投資でお金が増やせるって本当?

今回の盛り上がりで特異なのは、お金の増やし方を投資に限定した意見が多いことです。

お金は働けばもらえますし、不用品を売るなどしてももらうことが出来ます。では、なぜ投資が進められるのかと言えば、働くためには時間が必要で、何かを売るためには、売るものが必要だからです。どちらも「自分の持っているものを他人に提供」というのが必須になるため、必ず何かを失うことになります。

しかし、投資は違います。投資にも色々な種類がありますが、例えば一番有名な「株」においては、安い時に買って高い時に売ることでお金を得ることが一般的な目的とされています。「100円で買った株を120円で売ったら20円儲かるよね?」ということです(配当金などの話はここでは置いておきます)。

これを「お金に働いてもらう」などと言いますが、何かを提供することで代わりにお金を受け取るのではなく、お金を使ってお金を増やすことで、代償なくお金を手にしようというのが投資の基本的な考えになります。

日本では、提供できる時間を使い切ってしまっている人が多く、また個人売買で得られるお金も多くないため、それ以上お金を稼ごうと思ったら「お金に働いてもらう」必要があるということです。これは事実で、上手にやれれば投資でお金は増えます。

投資の勝敗は運で決まる

ここから実践的な話です。

最近よく聞くのが「つみたてNISAで少しづつ貯めていけば複利でお金は増える」というような話ですが、これは本当でしょうか?

先に答えを言うと、それは「運次第」です。「過去30年間、〇〇を買い続けていれば資産は〇倍になっている」といった話がよくありますが、これは都合の良い期間を切り取るとそう見えるだけです。

例えば日経平均株価は、バブルの時に約39,000円の高値を付けています。30年以上経った今年の高値は約22,000円です。

日経平均株価が最高値を付けた1990年~2010年までの20年間に毎年決まった金額を株として積み立てていた場合、それが日経平均株価に連動する株だった場合、評価額は半分以下になりますお金に働いてもらおうと思ったら、20年も頑張ったのにお金が半分以下になってしまったということです。これは前後数年間、期間が異なったとしても似たような結果になります。

しかし、株価が上昇し始めた2012年から同じような形で投資を始めた人であれば、半分どころかお金は倍以上になっています。これは、たまたま安い時から始めて、今まで株価が上がり続けているからです。

「日経平均はダメだけど、アメリカのダウなら上がり続けている!」とか「全世界インデックス投資なら過去30年間の実績で、平均7%は利益が得られると証明されている!」という人もいますが、それも「たまたまた後から見たらそうなっている」というだけの話です。

全世界インデックスもアメリカの比率が圧倒的に高いのでアメリカ次第ですし、それに限らず、ここ数十年世界の景気は全てアメリカに引っ張られています。アメリカと中国の間で戦争でも起これば一発でアウトですが、未来のことは誰にもわかりません。

また、投資に回したお金が増える前に、自身の健康が衰えてしまうこともあるでしょう。投資でお金を増やして家を買おうと思っていたら、不動産価格の方が上がってしまったということもあるでしょう。そういった個人の事情も含め、必要なタイミングでお金が増えているかどうかは、運で決まるというのが投資の現実です。

投資はお金を現金以外に変える一つの手段

とはいえ、お金持ちはほとんどが投資を行っています。理由は「世の中の仕組み的に、現金を保有することは損である可能性が高いから」です。

医療の進歩で死亡率が減少したり、技術の進歩で食料不安が減って行ったりした結果、人口は世界中でドンドン増えて行っています。人口が増えるということはお金を使う人が増えるということなので、市場に出回るお金を増やすために各国の政府はお金を刷って増やします

お金が増えるということは、お金の相対的な価値が下がるということです。お金の価値が下がるということはモノやサービスの価値が上がるということなので、物価は上昇します

年配の方から「昔はラーメン1杯30円だった」とか「部屋は1畳1000円と言われていた」など、昔は物価が安かったという話を聞いたことが1度はあると思いますが、今では信じられないような価格です。このように、物価というのは少しづつ高くなっていきます。「日本はデフレだ」という話もありますが、それでも長期で見ると物価は上がっています。

つまり、お金を現金で持っていると高確率で損をするということです。

50年前に「この30円でいつかラーメンを食べよう」と貯金箱に入れていたとします。しかし、今その貯金箱を割って30円を出したとしても、ラーメンを食べることは出来ません。ラーメンの価格は30円から700円くらいまで上昇してしまったからです。物価が上がると、現金の価値は下がるのです。

しかし、株などの金融商品はその価値の下がった「現金で買うモノ」なので、物価が上がればそれに伴って上がっていきます。

技術が進歩し、人口が増加し、お金の総量が増える世界においては、現金の価値は減り続ける運命にあります。だからこそ、お金持ちの人たちは「お金を現金以外に変える」という目的で投資を行うのです。

投資はお金を出資する行為なので見返りがあって当然

投資には「安く買って高く売る」というイメージがあります。これはその通りなのですが、本質的には投資とは「出資」です。

日本で最もメジャーな「株」で言えば、「株式会社〇〇にお金を出資し、代わりに株券をもらう」というのが「株を購入する」の意味です。マネーゲームの側面が圧倒的に強いため隠れてしまっていますが、株を買うという行為は出資者になるという行為なのです。

銀行からお金を借りる場合、必ず全額返さなければなりませんし、利子も付きます。その取引だけを見れば、借りる側は100%損をします。

しかし、株式市場からお金を集める場合損をする必要はありません。出資者が支払う金額に相当する株券を渡せばOKで、その後その株券がいくらになるかは会社には関係ありません。会社は株を発行することで、銀行からお金を借りるより低いリスクで、また多くのお金を手に入れることが出来るのです。

しかし、美味しい話ばかりではありません。出資者は「自分が得をする」と思うからこそ出資を行うのです。当然、出資を受ける側(会社)は、出資者に「うちに出資してくれたら得するよ!」というのをアピールしなければなりません。

そこで、会社側は「株価を上げる」「配当金を出す」など出資者への見返りを提供します

この見返りが出資とワンセットになっているため、「投資を行うと見返りがある」ということになり、「現金を持っているよりも投資を行った方が得しやすい」という状況を作っているのです。

投資は儲かって当然だが、実際は中々儲からないという現実

ここまででお伝えしてきたように、投資というのは仕組み上は儲かりやすいものになっています。

投資が儲かりやすい理由人口は世界的にまだまだ増える
人口が増えると通貨の量が増えるためお金の価値が相対的に下がる
お金の価値が下がると物価は上がる
株価や不動産は物価と共に上がる
出資者には見返りがある

しかし、日経平均の例でもお伝えしたように、株をはじめとする金融商品で儲かるか損するかは、ほぼ運で決まります

儲かりやすい仕組みになっているにも関わらず、一説には、日本の個人投資家の9割は投資で損をしているとも言われています。バブル崩壊後の失われた20年のような、世界でも類を見ない不況があったせいでしょうか。

しかし、もし自分がアメリカに産まれて投資を行っていたら…と考えると話は全く変わってきます。アメリカのダウは日経平均のように大きく落ちることも無く、ほぼ右肩上がりで上昇し続けています。アメリカでは、少なくとも過去100年以内に生まれた人であれば、投資をいつ始めてもほとんどの人が大きく資産を増やせているはずなのです。

生まれる国も含めての運なのですが、「仕組み上儲かりやすいはずなのだから、損するリスクを負ってでも私はやりたい」と思えるか、「確率的に7割儲かる、3割損するだったとしても、私は損が怖いのでやりたくない」と思うのかは個人差があると思います。

金融庁や証券会社は投資参加者を増やしたくて躍起になっているようですが、都合の良い情報に飛びついて言われるがままにやるのではなく、リスクを理解した上で自分自身の判断で選択すべきだと思います。